沖縄のマリンレジャー業界の課題

沖縄のマリンレジャー業界は、日本国内外から多くの観光客を迎える一方で、 安全対策の不備、環境破壊、規制の甘さ、人材不足、反社・半グレの参入 といった深刻な課題を抱えています。これらの問題を整理し、根本的な解決策を提示します。
1. 法制度と規制の不備
(1) 許認可制の欠如(届出制の問題)
- 現在、 沖縄のマリンレジャー業界は届出制のため、事業者の適正審査がない 。
- 無資格・無保険の事業者が簡単に参入可能 であり、安全基準の徹底が困難。
- 許認可制がないため、 業界全体の品質管理や統一基準の策定が困難 。
(2) 行政の監視体制の甘さ
- 事業者数が多いため、 安全管理を一元的に担う行政機関がなく、無許可営業や安全基準違反が横行。
- 海は公共のものであるため、自分勝手に海域を利用する事業者による摩擦や漁協との対立が発生。
- 反社会的勢力(反社・半グレ)が参入しやすい環境になっている。
(3) 罰則の弱さ
- 違法営業を行っても罰則が軽く、摘発されても再開が容易。
- 業務命令で重大事故を起こしても、 責任が担当者に限定されるため、事業者は法的責任回避できる仕組みとなっている。
2. 安全対策の不備
(1) 無資格・無保険の事業者の増加
- インストラクター資格を持たずに営業する業者が増え、安全教育が不十分。
- 特にSUPなどのマリンスポーツは無資格でも営業可能。
- 賠償責任保険以外の保険に未加入の事業者が多く、事故発生時に補償が受けられない事例がある。
(2) 水難事故の増加
- 2024年の 沖縄県内の水難事故件数は128件、死者45人、行方不明2人 (※2024年6月時点)。
- GPSトラッカーの義務化が進んでおらず、 事故発生時の迅速な対応が困難 。
- 1人船長(単独運航)の危険性が指摘されているが、禁止措置がない 。
(3) 緊急対応・救命設備の未整備
- ダイビングインストラクターの資格維持に安全対策講習会への参加義務はなく、一切安全対策のアップデートを行なっていない事業者も存在。
- AEDや酸素ボンベの設置が義務化されておらず、事故時の初期対応が遅れる。
- 緊急時への対応トレーニングが努力義務のため、事業者によっては通報・救助体制が不十分な場合がある。
3. 環境破壊と観光資源の管理不足
(1) サンゴ礁の破壊
- ダイバーやシュノーケラーの接触によるサンゴ礁の損傷が深刻化 。
- 係留ブイの設置が進まず、 アンカリングによるサンゴ礁の破壊が日常的に発生 。
- サンゴ礁保全は自主ルール任せとなっており、アンカリングによるダメージは40年以上蓄積している。
(2) オーバーツーリズム
- 人気スポット(青の洞窟、慶良間諸島など)では、 1日の来訪者数が適正キャパシティを超えている 。
- 環境への負担が増大し、観光資源の劣化が進行。
(3) 海洋汚染
- 観光船の排水、ゴミの不法投棄、日焼け止めの化学成分による海洋汚染。
- サステナブルツーリズムの概念が浸透しておらず、 事業者の環境意識が低い 。
4. 人材不足と労働環境の悪化
(1) 業界のブラック化
- 低賃金・長時間労働・季節労働の影響で、人材が定着しない。
- インストラクターの社会的地位が低く、 収入も低いため、2年以内の離職率が90%に達している。
- 安全研修・スキルアップの機会が不足 しており、経験や知識不足のスタッフが増加。
(2) 外国人インストラクターの増加と問題
- 外国人インストラクターの増加により、 沖縄特有の潮流やサンゴ礁保護ルールを知らないケースが増加。
- 2018年の特例措置により、 外国人インストラクターは潜水士免許不要 となったが、この特例が安全リスクを高めている。
5. 反社・半グレの参入
(1) 違法営業の温床
- 反社・半グレが、無許可のダイビングツアーや水上バイクツアーを運営。
- 個人情報を事業者に提出するため、被害に遭っても被害届を出せない状況にある。
- 現金商売が多く、マネーロンダリングの温床になりやすい 。
(2) トラブル発生時のリスク
- 暴力的な手段を連想させる威圧で観光客とトラブル解決を図る事例がある 。
- 健全な事業者が圧迫され、 業界全体のイメージが悪化 。
6. 外国資本の無秩序な参入
(1) 環境ルールを無視した事業者
- 沖縄の環境を理解せずに 低価格ツアーを実施し、過剰な観光開発を進める外国資本が増加 。
- サンゴ礁保全を無視した営業活動により、環境破壊が懸念される。
(2) 価格破壊と安全対策の軽視
- 低価格競争により、知識や経験のない人材の雇用が増加し、サービス・安全性が低下。
- 適正価格で営業する事業者が淘汰される 。
- 沖縄の海を知らないガイドによる事故のリスクが高まる。
7. 解決策の提案
- 許認可制の導入と事業者審査の厳格化
- 安全基準の強化(GPSトラッカー義務化、1人船長の禁止、AED・酸素ボンベの設置義務化)
- サンゴ礁保全のための法整備
- 外国人インストラクターの規制強化
- 労働環境の改善
- 観光資源の持続可能な利用(来訪者数の制限、キャパシティマネジメントの導入)
沖縄のマリンレジャー業界が持続可能な形で成長するためには、業界の健全化、安全対策の強化、環境保全の徹底、適正な市場競争の確立が必要不可欠です。