Okinawa Marine Leisure White Paper 2026

沖縄マリンレジャー白書 2026

観光客数は過去最高。マリンレジャー事故は過去最多タイ。
公的統計と現場の知見から、沖縄の海のいまを毎年記録する年次レポート(創刊号)です。

発行: 一般社団法人マリンレジャー振興協会(AMP) | 公開: 2026年7月4日 | 2025年(令和7年)統計は速報値・暫定値を含みます

2025年、沖縄の海で何が起きたか

2025年の沖縄は、入域観光客数1,075万人と過去最高を更新しました。その同じ年、マリンレジャーに伴う人身事故者は111人。統計が始まった2001年以降で最多だった2016年に並びました。観光の絶頂と海の安全の危機が、同時に進行しています。

1,075万人
入域観光客数(過去最高)
2019年比 +5.8%
111
マリンレジャー事故者
過去最多タイ(速報値)
52
水難死者数
(県警・暫定値)
33
夏期水難発生件数
都道府県別で全国最多

マリンレジャー事故者は5年で約1.5倍に

2021年(R3)76人
2022年(R4)80人
2023年(R5)93人
2024年(R6)109人
2025年(R7・速報値)111人

出典: 第十一管区海上保安本部(死者・行方不明者は2021年21人→2025年29人)

2026年速報

2026年は、過去最多を大きく上回るペース

65
事故者数(6月29日現在)
前年同期比 +24人
12
死者・行方不明者
前年同期比 +2人
7
観光客の占める割合
(日本人32人・外国人14人)

活動別ではシュノーケリング中19人が最多で、ダイビング中15人、SUP中13人と続きます。過去最多タイだった2025年をさらに上回るペースで事故が発生しており、対策は一層急務です。

出典: 第十一管区海上保安本部発表(2026年6月29日現在・速報値/沖縄タイムス2026年7月2日報道)

誰が、何をしていて事故に遭っているのか

過去5年間(2021〜2025年)の事故者は計469人、うち死者・行方不明者は129人。データは、対策を打つべき場所をはっきり示しています。

活動別: スノーケリングが事故の3分の1、死者の半数

スノーケリング中154人(死者63人)
遊泳中84人(死者19人)
ダイビング中82人(死者25人)
SUP中42人(死者3人)
釣り中33人(死者9人)
トーイング遊具中25人(死者6人)

過去5年計・第十一管区海上保安本部(磯遊び15人・その他34人を含め計469人)

スノーケリングは「誰でもできる手軽な遊び」と思われがちですが、データ上は沖縄の海で最も命を落としている活動です。死者・行方不明者129人のうち63人、ほぼ半数がスノーケリング中でした。

3つの決定的な事実

87%
スノーケリング・遊泳中の死者のうちライフジャケット非着用の割合
49%
50歳以上の事故者のうち死者・行方不明となった割合(約2人に1人)
70%
死者・行方不明者全体に占める50歳以上の割合

活動別に見えてくる、それぞれの顔

  • ダイビング — 事故者の93%が観光客。死者の84%が40歳以上。
  • SUP — 事故者の69%は県内在住者。78%が「初めて」または「経験1年未満」。観光客ではなく県民の入門者が事故に遭っています。
  • スノーケリング・遊泳 — 2022年以降、事故者の7割以上が観光客。外国人観光客の事故も高止まりしています。

構造的な課題 — 3,384の届出、優良認定はわずか2.5%

沖縄県の水上安全条例に基づく届出事業者数は延べ3,384(実数2,388社)。一方、公安委員会が認定する「安全対策優良海域レジャー提供業者(マル優)」の取得は85社、わずか2.5%にとどまります。

業種届出数マル優認定取得率
プレジャーボート業1,30134社2.6%
潜水業1,09330社2.7%
スノーケリング業1,00816社2.5%
海水浴場695社1.6%
マリーナ業90社0%

これは事業者の怠慢というより、仕組みの問題です。認証を取っても選ばれるメリットがなく、取らなくても不利益がない。安全に投資した事業者が価格競争で不利になる構造が、30年来放置されてきました。利用者が「安全な事業者」を見分けられる市場をつくることが、沖縄観光の次の課題です。

AMPの取り組み(2023〜2026年)

海の見守りインフラ(総務省採択事業)

GPSトラッカー「SEAKER」とLPWA通信(ELTRES)の受信網を、石垣島・与那国島・波照間島の3拠点で八重山地区全域に、慶良間・久米島の2拠点で粟国を含む慶良間海域全域に整備。ソニーが構築した沖縄本島周辺の既設受信網と合わせて、県内ほぼ全域をカバーしました。「漂流してから探す」のではなく「漂流を起こさせない」未然防止型の海上安全インフラです。2025年からは損保ジャパンと連携した傷害保険付きプランの提供も始まりました。

安全基準・講習・データベース(日本財団助成事業)

ダイビング・カヤック・スノーケリング等の危機管理マニュアルと安全教育動画30本超を制作。安全講習の受講履歴を一元管理するデータベースを構築し、医療用酸素キットの配備拠点を県内61拠点に整備しました。資格更新制の講習とセットで「沖縄全域をカバーする医療用酸素ネットワーク」を構築しており、2026年度はさらに100拠点の追加整備を進めています。

サンゴ礁保全と海域利用の秩序づくり(沖縄県サステナブルツーリズム推進事業)

サンゴ礁保全は長く必要性が指摘されながら、関係者の利害が絡み具体化してきませんでした。AMPは石垣島沿岸で漁協・マリン事業者・行政・有識者による係留ブイ設置協議会を組成し、立場を超えて意見を出し合える場を創出。アンカリングによるサンゴ礁の損傷を防ぎながら、安全に海域を利用する仕組みを地域とともに具体化しています。八重山では事業者自らが安全と保全を担う協議会の設立も始まりました。

研究・政策提言

名桜大学との共同研究で、国際基準と国内法令を統合した「沖縄グローカル安全基準」の策定を推進。県議会への参考人招致、議員連盟勉強会などを通じて、現場の実態を政策に届けています。

5つの提言 — 沖縄を「世界で最も安全に海を学べる地域」へ

  1. ライフジャケット着用を、沖縄の海の文化にスノーケリング・遊泳中の死者の87%が非着用でした。事業者・宿泊施設・行政が一体となった着用環境の整備を提言します。
  2. スノーケリングを「海のサバイバル技術」として教える死者の半数がスノーケリング中である以上、これは教育の問題です。学校プール集約化と連動した全天候型の海洋安全教育拠点の整備を提言します。
  3. 安全に投資した事業者が選ばれる市場をつくる優良認定取得率2.5%という現実を直視し、認証取得の実利の創出と届出制のあり方の見直しを提言します。
  4. 係留ブイと保全協力金で「利用しながら守る」海域管理へサンゴ礁を損なわない係留ブイの設置・ルール化と、観光客が保全に参加できる協力金の仕組みを提言します。
  5. データに基づく安全行政への転換海保・県警・県・事業者に分散するデータの統合と、本白書による毎年の定点観測の継続を提言します。
出典・注記
  • 第十一管区海上保安本部 交通安全対策課「マリンレジャーに伴う人身事故防止に向けた令和8年の取組について」(令和7年統計は速報値)
  • 第十一管区海上保安本部発表 2026年上半期マリンレジャー事故速報(2026年6月29日現在・沖縄タイムス2026年7月2日報道)
  • 沖縄県警察 水難統計(令和7年暫定値: 発生115件・罹災者136人・死者52人)
  • 警察庁生活安全局「令和7年夏期における水難の概況」
  • 沖縄県 入域観光客統計(令和7年: 1,075万5,800人・過去最高)
  • 沖縄県公安委員会 マル優認定状況・水上安全条例届出事業者数(AMP整理)
  • 海上保安庁統計は「マリンレジャーに伴う人身事故」、県警察統計は河川等を含む「水難」全体で、集計範囲が異なります。令和7年の数値は確定値公表後に更新します。

この白書は、毎年更新していきます

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