沖縄マリンレジャー白書 2026
公的統計と現場の知見から、沖縄の海のいまを毎年記録する年次レポート(創刊号)です。
キービジュアル:生成AIにより制作
2025年、沖縄の海で何が起きたか
2025年の沖縄は、入域観光客数1,075万人と過去最高を更新しました。その同じ年、マリンレジャーに伴う人身事故者は111人。統計が始まった2001年以降で最多だった2016年に並びました。観光の絶頂と海の安全の危機が、同時に進行しています。
1,075万人
入域観光客数(過去最高)
2019年比 +5.8%
111人
マリンレジャー事故者
過去最多タイ(速報値)
51人
水難死者数
(県警・2026年9月3日公表の暫定値)
33件
夏期水難発生件数
都道府県別で全国最多
マリンレジャー事故者は5年で約1.5倍に
出典: 第十一管区海上保安本部(死者・行方不明者は2021年21人→2025年29人)
2026年上半期は、前年同期を上回る事故者数
65人
事故者数(6月29日現在)
前年同期比 +24人
12人
死者・行方不明者
前年同期比 +2人
7割
観光客の占める割合
(日本人32人・外国人14人)
活動別ではシュノーケリング中19人が最多で、ダイビング中15人、SUP中13人と続きます。この記録は2026年6月29日時点の速報で、2026年通年の結果を示すものではありません。
出典: 第十一管区海上保安本部発表(2026年6月29日現在・速報値/沖縄タイムス2026年7月2日報道)
誰が、何をしていて事故に遭っているのか
過去5年間(2021〜2025年)の事故者は計469人、うち死者・行方不明者は129人。データは、対策を打つべき場所をはっきり示しています。
活動別: スノーケリングが事故の3分の1、死者の半数
過去5年計・第十一管区海上保安本部(磯遊び15人・その他34人を含め計469人)
スノーケリングは「誰でもできる手軽な遊び」と思われがちですが、データ上は沖縄の海で最も命を落としている活動です。死者・行方不明者129人のうち63人、ほぼ半数がスノーケリング中でした。
3つの決定的な事実
87%
スノーケリング・遊泳中の死者のうちライフジャケット非着用の割合
49%
50歳以上の事故者のうち死者・行方不明となった割合(約2人に1人)
70%
死者・行方不明者全体に占める50歳以上の割合
活動別に見えてくる、それぞれの顔
- ダイビング — 事故者の93%が観光客。死者の84%が40歳以上。
- SUP — 事故者の69%は県内在住者。78%が「初めて」または「経験1年未満」。観光客ではなく県民の入門者が事故に遭っています。
- スノーケリング・遊泳 — 2022年以降、事故者の7割以上が観光客。外国人観光客の事故も高止まりしています。
構造的な課題 — 安全対策を比較できる情報へ
水上安全条例に基づく届出と、安全対策優良海域レジャー提供業者(マル優)の指定は異なる制度です。未指定であることだけを理由に、違法または危険な事業者と判断することはできません。
業種別の延べ届出数、重複を除いた事業者数、指定事業所数は同じ単位ではありません。取得率を示すには、集計日・対象業種・分子と分母・重複処理をそろえる必要があります。
2026年9月17日の訂正
旧版の業種別表には割合の計算誤りがあり、表の届出数合計と本文の総数も一致していませんでした。このため、取得率2.5%という記述と当該表を撤回しました。集計条件を照合できるまで、政策判断や比較の根拠として使用しないでください。最新の公表一覧は沖縄県警察の案内からご確認ください。
AMPは、安全対策への投資が利用者に伝わり、事業者の取り組みが正当に評価される市場づくりを目指します。これはAMPの提言であり、特定の事故原因を統計から断定するものではありません。
AMPの取り組み(2023〜2026年)
海の見守りインフラ(総務省採択事業)
GPSトラッカー「SEAKER」とLPWA通信(ELTRES)の受信網を、石垣島・与那国島・波照間島の3拠点で八重山地区全域に、慶良間・久米島の2拠点で粟国を含む慶良間海域全域に整備。ソニーが構築した沖縄本島周辺の既設受信網と合わせて、県内の広い範囲で位置情報を受信できる体制を整えました(受信できる範囲はカタログ値に基づく目安であり、受信を保証するものではありません)。「漂流してから探す」のではなく「漂流に早く気づく」ための海上安全インフラです。2025年からは損保ジャパンと連携した傷害保険付きプランの提供も始まりました。
安全基準・講習・データベース(日本財団助成事業)
ダイビング・カヤック・スノーケリング等の危機管理マニュアルと安全教育動画30本超を制作。安全講習の受講履歴を一元管理するデータベースを構築し、医療用酸素キットの配備拠点を県内71拠点(2026年7月時点)に整備しました。資格更新制の講習とセットで「沖縄全域をカバーする医療用酸素ネットワーク」を構築しており、2026年度はさらに100拠点の追加整備を進めています。
サンゴ礁保全と海域利用の秩序づくり(沖縄県サステナブルツーリズム推進事業)
サンゴ礁保全は長く必要性が指摘されながら、関係者の利害が絡み具体化してきませんでした。AMPは石垣島沿岸で漁協・マリン事業者・行政・有識者による係留ブイ設置協議会を組成し、立場を超えて意見を出し合える場を創出。アンカリングによるサンゴ礁の損傷を防ぎながら、安全に海域を利用する仕組みを地域とともに具体化しています。八重山では事業者自らが安全と保全を担う協議会の設立も始まりました。
研究・政策提言
名桜大学との共同研究で、国際基準と国内法令を統合した「沖縄グローカル安全基準」の策定を推進。県議会への参考人招致、議員連盟勉強会などを通じて、現場の実態を政策に届けています。
5つの提言 — 沖縄を「世界で最も安全に海を学べる地域」へ
- ライフジャケット着用を、沖縄の海の文化にスノーケリング・遊泳中の死者の87%が非着用でした。事業者・宿泊施設・行政が一体となった着用環境の整備を提言します。
- スノーケリングを「海のサバイバル技術」として教える事故の要因は複数あります。予防策の一つとして、安全教育の充実を目指します。学校プール集約化と連動した全天候型の海洋安全教育拠点の整備を提言します。
- 安全に投資した事業者が選ばれる市場をつくる制度の違いと個別の安全対策を利用者が確認できるようにし、認証取得の実利の創出と届出制のあり方の見直しを提言します。
- 係留ブイと保全協力金で「利用しながら守る」海域管理へサンゴ礁を損なわない係留ブイの設置・ルール化と、観光客が保全に参加できる協力金の仕組みを提言します。
- データに基づく安全行政への転換海保・県警・県・事業者に分散するデータの統合と、本白書による毎年の定点観測の継続を提言します。
- 第十一管区海上保安本部 交通安全対策課「マリンレジャーに伴う人身事故防止に向けた令和8年の取組について」(令和7年統計は速報値)
- 第十一管区海上保安本部発表 2026年上半期マリンレジャー事故速報(2026年6月29日現在・沖縄タイムス2026年7月2日報道)
- 沖縄県警察「安全な海や川等でのレジャー」(2026年9月3日更新・2026年9月17日確認。令和7年暫定値:発生114件・罹災者135人・死者51人・行方不明者0人)
- 警察庁生活安全局「令和7年夏期における水難の概況」
- 沖縄県 入域観光客統計(令和7年: 1,075万5,800人・過去最高)
- 届出・マル優の制度と公表一覧:沖縄県警察の案内。本白書の旧版に掲載した取得率は、集計条件の不整合があるため撤回しました。
- 海上保安庁統計は「マリンレジャーに伴う人身事故」、県警察統計は河川等を含む「水難」全体で、集計範囲が異なります。令和7年の数値は確定値公表後に更新します。
引用・利用上の注意と更新履歴
海上保安庁と県警察の統計は集計範囲が異なるため、合算しないでください。事故者数だけでは、参加者数を分母とする事故発生率や活動ごとの危険度は比較できません。AMPの事業実績・提言と、公的統計による事実は区別して引用してください。
2026年9月17日:県警の2025年暫定値を更新。集計条件に不整合のあるマル優取得率と表を撤回。2026年上半期速報の対象時点を明示。
関連資料:沖縄県水難事故の定点観測データ / 全国比較 / AMPの理念と組織。訂正のご連絡はお問い合わせ窓口へ。
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