観光地はテーマパークではない

観光地は決してテーマパークではない。

オーバーツーリズムは、ゴミや騒音など、観光地の「生活の質」を低下させ、さらには観光客にとっても「多すぎる観光客」の波の中を泳ぐ羽目になります。

観光業といっても地域全体の一角で、住んでいる人々の生活空間の一部を経済資源として展開することである。これを明確に示している。テーマパークは営利事業の人工空間で「生活」も「コミュニティー」もないことを忘れて観光産業の開発をするととんでもないことになる。

観光地の事情は各地でいろいろ違いもある。しかし、観光戦略の問いを立てる場合、あくまでも地域資源の一部を展開する経済行為であることを前提に考えるべきで、これが持続可能な観光業にしていく基本だ。

コミュニティーとしての多様性や生活の様式をないがしろにした開発は、一時的に経済的な指標を高くすることはできるかもしれない。しかしツーリストの数が低下したときに、経済的損失のみならず、地域社会そのものが大打撃を受けると考えられる。

「知る人ぞ知る観光地を目指す」という戦略も合わせ、ヘルシンキは、京都の観光インフラが現在直面しているような、観光客の群れに圧倒される事態から逃れられているのだ。言い換えると、ヘルシンキは「本当のファン」になってくれる人に戦略的にターゲットを絞って、マーケティング活動を行っているのである。つまり、観光客の「数」ではなく、「質」を優先している言えます。

サスティナビリティーというのは、問題が生じる前に対処しなくてはならないのではないでしょうか。

高度経済成長期の昭和「安・近・短」型の観光インフラが残る日本の旅行会社は、送り届ける人間の数を盾に、沖縄の受け入れ先の料金を下げさせました。その結果として、主に旅行会社や交通機関が儲かる仕組みが出来上がっていたのです。

利益水準ギリギリで運営しているため、時代に合わせてビジネスモデルを変更する余裕もありません。

ビジネスモデルを時代に合わせられないのですから、必然的に衰退の一途をたどるというのが、日本国内の多くの観光地が陥った悪循環です。時代の変化によって、ビジネスモデルが崩壊してしまったのです。この状態は、まさに、生産性の低い業界や会社が陥る典型的な「負のスパイラル」です。

「整備より、とりあえず多くの人に来てもらえばいい」というモデルからすると、当然、「観光施策=情報発信」が観光戦略の基本となります。なぜ観光収入8兆円の達成が難しいのか、その理由の根っこには、いまだに日本に根付いている、この「観光施策=情報発信」という昭和時代のマインドがあります。

極めて高価な動画と、まったく意味のないホームページ、シンポジウムなどが無駄に作られただけです。情報発信を得意とする広告代理店などが儲けただけなのです。

「とりあえず情報発信をしておけば、外国人が見てくれて、たくさんの人が来る」という妄想を、観光業に携わっている多くの人が抱いているように思わざるをえません。

今はSNSの普及によって、個人が観光資源の魅力を伝えることで勝手に口コミで広がってくれる。逆に魅力が足りない場合、どんなに観光地が発信しても、観光客が持続的に来ることがありません。

せっかく来てもらった観光客に十分なお金を落としてもらわないと、観光戦略の意味がないのです。

観光戦略は、地方がお金を稼ぐため、要は地方創生のために実行されています。今のままでは、訪日外国人が落としてくれるはずのお金を、落としてくれはしません。そのための準備が整っていないために、みすみす取り逃しているのです。つまり、沖縄は現実的な観光戦略の本質的意味で建てる必要があります。

金額を落とさない観光客がたくさん来ても、それは単なる観光公害でしかありません。今までの誘致人数主義を1日も早くやめて、稼ぐ戦略を実行するべきです。

他の地域でできているか否かは、沖縄がやるべきかどうかという議論とはなんの関係もないと思っています。

白砂のビーチが4kmに渡って続くボラカイ島は、米旅行雑誌「コンデ・ナスタ・トラベラー」のビーチ・ランキングなど取り上げられて注目を集めるようになった。2000年初めはまだ静かなビーチリゾートだったが、現在は各種マリン・アクティビティ業者や宿泊施設がひしめき、2017年の訪問客数は前年比16%増の200万人以上。このうち105万人超が海外客で、その7割を中国と韓国が占めていました。

同島の2017年の観光収入は同14.8%増の10億ドルまで拡大したが、受け入れに必要なインフラ整備が追い付かず、違法建築やゴミがあふれ、水質が悪化。フィリピン政府は今年4月26日から6か月間、島を一時的に閉鎖する措置に踏み切りました。

  • フィリピンのボラカイ島でもオーバーツーリズムによる環境破壊で島が閉鎖されました。
  • インバウンドの急増でホテルが乱立し排水の規制がなかったため、下水や排水が海に直接流れ込み海洋汚染が深刻化し、視察した当時のドゥテルテ大統領が「災害宣言」を発令し、ボラカイ島が閉鎖され観光収入を失われました。
  • タイのピピレイ島のマヤ湾は、オーバーツーリズムによる環境破壊で2018年6月から2022年1月まで閉鎖されました。
  • 狭いビーチに1日に5,000人とボート200隻が訪れ、深刻な環境破壊が発生しました。
  • 環境保全のルールがなかったため、入域数やボート数をコントロールしていたのは、事業者の判断となってました。

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